新NISAタイプとヒューマンインザループ

 産労総合研究所によると、2024年度の新社会人は、「セレクト上手な新NISAタイプ」と称されています。
デジタルに慣れ親しんでいる一方で、対面コミュニケーションの経験が乏しく、異世代とのコミュニケーションに戸惑う傾向があるからだそうです。
また、彼らは目標を明確に定め、情報を選択して自分の道を歩み始めることが特徴とされています。
就職活動や職場での振る舞いにおいても、このような特性が見られるとのことです。

 それではこのようなタイプは、人間とAIが協力して仕事をこなしていく事はどうなのでしょうか?
AIを「異世代」と定義すれば、AIとのコミュニケーションに戸惑う事になりますが、セレクト上手と考えるとAIの判断をうまく評価してくれそうな気がします。

 人間とAIが協力してタスクを遂行するシステムのことを、ヒューマンインザループ(Human-in-the-Loop、HitL)」といいます。
AIが自動化できない複雑な判断や、倫理的な決定を必要とする場面で人間が介入し、AIの判断を監視、修正、または指導する役割を担う事をいいます。
たとえば、医療診断を行う場合、AIは多くの画像を迅速に分析できますが、最終的な診断には医師の専門知識と経験が必要とされるため、このようなHitLのアプローチが採用されているようです。

 ヒューマンインザループの考え方を、生産管理システムの更新に適用する場合、どのような事があげられるでしょうか?
たとえば、導入時の要件定義フェーズでは、どの判断を人間が行い、どのプロセスを自動化するかのバランスを見つけることが考えられます。
管理者や作業者とのコミュニケーションを通じて、人間の判断が必要な領域を特定し、それらをシステム設計に反映させることが必要です。

 新たな生産管理システムの運用においては、人的判断をどのレベルで組み込むかがポイントです。
人的判断を排除しすぎると、予期せぬ状況に対応できなくなる可能性がありますが、逆に過度に依存すると効率が低下します。
システムの目的や業務の性質を考慮し、運用フェーズでの人的介入の必要性を考えなければなりません。
また、運用中に得られるデータを活用して、人的判断のレベルを適宜調整することも有効だと思われます。

いずれも、システムの柔軟性と人間の判断力をバランス良く組み合わせることが、成功への鍵となるでしょう。

生産管理システム機能の具体例では、資材所要量計算(MRPの演算ロジック)の処理結果に人的判断を組み込むかどうかを検討する際には、以下のアプローチが考えられます。

  1. 現場の知識と経験の活用
    MRPシステムは、在庫データやマスタと処理ロジックに基づいて資材の必要量を計算しますが、管理者や現場の作業者はその日々の変動や特異な状況を理解しています。
    彼らの知識と経験を活用して、システムが提案する必要量をを補完することが重要です。
  2. 予測の不確実性管理
    MRPは予測に基づいていますが、市場の変動や供給の不確実性など、予測できない要素が常に存在します。
    得意先や営業のフォーキャストをどう判断し取り入れるか、または信頼するか、不確実性を管理しより柔軟な対応が必要です。
  3. 例外状況への対応
    MRP処理ロジックは通常の運用においては効率的ですが、例外的な状況や緊急事態には対応が難しい場合があります。
    半導体や資材不足の局面では、在庫をどれだけ余分に持てるかが課題になりました。
    人的判断を組み込むことで、これらの状況に迅速かつ適切に対応できるようになります。
  4. 連続的な改善プロセス
    MRPの結果に対する人的レビューを定期的に行うことで、システムの精度を向上させることができます。
    また、新しい市場の動向や技術の進歩をシステムに反映させるためには、人的判断が必要です。

このように、MRPの処理結果に人的判断を組み込むかどうかを検討し、システムの提案と現場の実情とをバランス良く組み合わせることが、効果的な生産管理システムを構築する鍵となります。

新社会人の方も、これら人的判断ができる仕事も目指して欲しいものです。

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下田浩二