牛の道をDX舗装するとどうなる?

■貴社の現行システムはどのような「牛の道」でしょうか?
今回は「牛」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の話です

「DX舗装」とは、デラックス舗装ではなく、もちろん「デジタルトランスフォーメーション(DX)」のことです。
「牛」はアメリカのIT業界の格言である「Don't pave the cow path(牛の道を舗装するな)」から引用しましたが、少々わかりにくいタイトルになったかもしれません。

この格言は、昔ボストン市で道路舗装を計画的に行わず、牛が通った跡だけを舗装したために便利にならなかったという話に由来すると言われています(諸説あります)。
要は、論理的でなく非効率的な道路計画、つまり場当たり的な解決策ではうまくいかない、という意味です。

日本では約30年前、海外からERPシステムが紹介され、「ベストプラクティス」(最も効率的な方法)を謳い文句に多くの大手企業がシステムを導入しました。
これは、「現状のシステムは『牛の道』のようなものだから、計画的な舗装道路で効率化を図ろう」という発想が広がった結果かもしれません。

さて、製造業のさまざまな生産管理システム導入の相談の中には、既存業務(つまり牛の道)の舗装を求める要件も多くあります。

  • これまで通りの帳票出力が必要
  • ここは必ず印鑑が必要
  • この入力画面と同じものが必要

など、業務面では仕事が特定の人に依存している点も多く、

  • 所要量計算後、必ず〇〇さんの確認が必要
  • この得意先は△△さんの承認を得てから作業する
  • この部材は多めに買うかどうか□□さんに確認する

といった例が挙げられます。

こうした点に対し、従来の生産管理システム構築手法では対応が難しくなってきている印象があります。
つまり、「この問題にはこのツール、あちらには便利なパッケージがある」など、牛の道(カウパス)を舗装する形で部分最適の効果を狙う相談が増えているのです。

これまでの全社ERPシステムは、トップダウンで全体最適化を目指し、一気に舗装工事を進めてきました。
しかし、DXでは、上記のようにさまざまな道具を使い分ける発想が必要ではないかと思います。
つまり、全体の舗装計画は見据えつつ、早期かつ安価にカウパスをDX舗装するツールやデジタル技術が豊富に用意されているからです。

DX舗装は分断されては意味がありません。連携して初めて「道」と言えます。システム間のつながりが重要なのです。
もちろん、その中には生産管理システムなどの基幹システムも必要不可欠です。ただし、場合によっては迂回路も必要で、複雑すぎる道は混乱を招きます。

今回の「牛の道」では、牧草地から牛舎へ帰る牛の群れによってぐちゃぐちゃになっている道のイメージや、先頭の牛に後続が単に連なってのんびり歩くイメージ、もっとも効率的で安全なルートを歩くイメージなど、さまざまな道や牛の姿を思い浮かべたかもしれません。

さて、貴社の現行システムはどのような「牛の道」でしょうか?
自社の牛の道に合ったDXの方法がきっとあるはずです。

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下田浩二