わが社の工場には、どのようなDX人材が必要か?

仕事上、製造業の組織図を見る機会が多くあります。製造業の組織は、そのほとんどが機能別組織になっています。各部門が特定の業務に特化している構造です。

例えば、

- 営業部:製品の販売や顧客対応を行う

- 設計部:新製品の開発や既存製品の改良を行う

- 製造部:製品の製造を担当

- 購買部:原材料や部品の調達を担当

- 品質管理部:製品の品質を保証し、品質基準を維持する

- 経理部:財務管理や会計業務を担当

- 人事部:従業員の採用、教育、労務管理を行う

- 総務部:会社全体の管理業務をサポートする

このような組織構造により、各部門が専門性を発揮し、効率的に業務を遂行することができます。

上記の例には「情報システム部」がありません。実際、中小の製造業で独立して情報システム部を目にすることは多くありません。総務部や経理部の配下に、IT化や情報システム課などを配置している場合が多いのではないでしょうか?製造業では古くは、電算課などと称して、工場の原価計算を中心に組織されていて、今でも事務方と思っている方もいます。

製造業のDXが叫ばれている中、会社の組織として情報システム部門の位置付けは変化しています。中堅以上では独立化した組織として、または経営企画室の配下に組織している会社もあります。一方、中小の製造業では、「ひとり情シス」と揶揄され、組織上に記載もなく、工場のホストを一人で面倒みている方も多くいらっしゃいます。

皆様方の工場では、どうでしょうか?

2024年7月25日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「DX動向2024 - 深刻化するDXを推進する人材不足と課題」では、日本企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進において、深刻な人材不足が課題となっていることが示されています。組織名があったとしても、その中の人材は別の話です。

特に、ビジネスアーキテクトやデータサイエンティストなどの専門人材の不足が顕著であり、これがDX推進のボトルネックになっているとレポートしています。アーキテクトやサイエンティストと言われても、ピンとこないし、自社には関係ないと思われるかもしれません。

この中では必要な人材は、大きく5つに分け紹介されています。聞きなれない名称をキーにするのではなく、役割を中心に見ていきましょう。

1. DXの取組み(新規事業開発/既存事業の高度化/社内業務の高度化、効率化)において、目的設定から導入、導入後の効果検証までを、関係者をコーディネートしながら一気通貫して推進する人材

   ーーーこのような人材は多くは居ないと思います。会社全体の経営を見据え、設計を行うわけなので、「ビジネスアーキテクト」と呼んでいます。

2. ビジネスの視点、顧客・ユーザーの視点等を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定し、それらに沿った製品・サービスのありかたのデザインを担う人材

   ーーー従来であればオールマイティーの工場長をイメージします。青写真構想と呼んでもよいかもしれません。この役割を「デザイナー」と呼んでいます。

3. DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材

   ーーー現状の情報システム部門での役割のように思えますが、ここではDXの推進においてとあるように、データを集計するだけではなく、活用することが主になります。これは「データサイエンティスト」と呼びます。

4. DXの推進において、デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材

   ーーー現状の情報システム部門の役割のようですが、このような人材は比較的多いのではないでしょうか?この役割を「ソフトウェアエンジニア」と呼んでいます。

5. 業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う人材

   ーーーこの分野の人材は不足しています。常に最新のテクノロジー動向や知見が必要になります。「サイバーセキュリティ」と呼びます。

さて、皆様の工場にいる人材はどのような方で、不足している人材はどのような方でしょうか?調査結果によると、自社に必要なDX人材の定義や評価基準を持たない企業では、人材不足がより顕著であることが指摘されています。

まずは、必要なDX人材の定義や評価基準を持ち、自社育成や外部補完などから、会社としての組織に組み入れることを考えてはどうでしょうか?

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下田浩二