製造業「DX」と「CX」は何が違うのか?

 2024年5月31日 2024年版ものづくり白書(製造基盤白書)が発表されました。
この白書は、経済産業省、厚生労働省、文部科学省の3省が「ものづくり基盤技術振興基本法」に基づき毎年作成されます。
ものづくり業況などのデータ分析や課題、政府の取込や施策が、経済面、労働面、教育面から整理された資料となっています。
 今年度版は、
「国内投資の重要性が高まっている中、海外市場で稼ぎ連結ベースで過去最高益を更新する企業が多くあるものの、利益率は低水準となっている。」「理由としては、グローバルビジネスに適した経営の仕組みを整えてこなかったことが挙げられる」
「DXも個別工程のカイゼンにとどまり、事業機会の拡大領域の取組が少ない等、稼ぐ力の向上に繋がっていない」
と分析しています。
そして、
「CXによる組織経営の仕組み化」と「DXによる製造機能の全体最適化、ビジネスモデルの変革」が必要であると結んでいます。
では、製造業のDXとCXとはどのような関係があり、違いがあるのでしょうか?
製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、ご存じの通り、ITを利活用して、例えばリードタイム短縮、生産性向上、品質向上を実現し、ビジネスモデルの変革を目指す事を言います。 変革は単なる効率化とは違い、新たな製品やサービスの創出までを含めた考え方です。
では、CX(コーポレートトランスフォーメーション)とは何でしょうか? 
CXは、従来の階層的な組織構造を扁平化し、意思決定の迅速化や革新的なアイデアの促進を目指す事と言われています。 
ここで言う「扁平」とは、平らで階層がないフラットな組織のイメージです。
例えば、製造工程の実績や進捗をリアルタイムに収集したとしても、それを受けて、次の指示を出す役割などの組織が作られていない場合、効果は限定的です。そのため、従来の組織からアジャイルに活動できる組織へ変える事で効果を高める事ができます。
確かに企業から受領する提案依頼書(RFP)には、組織の変更や変革が記載されている事はあまりありません。
多くは現状の組織のまま、デジタライゼーションやデジタルトランスフォーメーションを行う事が記載されいます。
要件にCXは考慮されていない印象です。
CXとDXは共に、企業の変革を促進するための手法です。
CXは、組織全体の文化、戦略、プロセス、構造の変革を意味し、DXは、デジタル技術を活用してビジネスモデルやプロセスを改革することを指します。
しかし、
製造業においてDXとCXは、相互に関連しています。
CXによって組織の体制が柔軟化されることで、DXの導入が容易になります。
そして、DXによって得られたデジタル化された情報やデータを活用することで、組織の変革を推進することができます。
つまり、相互に影響を与えます。
2024年版ものづくり白書では、「CXによる組織経営の仕組み化」と「DXによる製造機能の全体最適化、ビジネスモデルの変革」は、「CX」×「DX」と掛け算による式で示されています。
製造現場は変化を嫌います。 品質や納期へ影響を第一に心配や不安が増すからです。
もちろん、硬直的な組織は弊害もあります。それらを考慮し現状の組織構造を振り返り、あるべき姿を考えてよいかなと思います。

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下田浩二